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明日、世界が終ることになった。
著名な巫女が予言した。科学者も、陰陽師も、大統領も占い師も口を揃えてそう言った。
終焉。
しかし予兆もなにもなく、おかまいなしに空は澄み、青く、遥かで美しい。
これが?どうなるっていうの。
実感が沸く前にその時は来るのかもしれないと、ラジオのコメンテーターは声を落としている。途絶えた。
てっきり電波がやる気をなくしたのかと思ったら違った。
隣の長い指が電源を切ったのだった。
「近藤さんは」
「へえ」
「ちゃんと会えたかな」
「会えたんじゃねえですか」
「だな」
「最後の瞬間はお妙さんの顔を見ていたい、すまない」
そう泣きながら詫びた近藤さんの頬に、キスをした。俺も動揺してるのかもしれない、わかんないけど。
土方さんは「謝ることじゃねえだろ」と言って近藤さんを送りだした。
屯所はもぬけのからになった。
俺らちょっと、捨て猫みたいだった。
だからきっと、やさしくしてほしくってお互い、すり寄ったんだ。母猫がわりのぼろい毛布も傍になかったから。
手に手を取って、なんて俺と土方さんじゃ、笑うしかないのに。
「行くぞ」手を引かれるまま。「はい。」運転は土方さん。
意外と雰囲気に酔うタイプ?発見だ。
もっと混乱しているかと思ったのに、どこもかしこもしんとしていた。
街角の爺が言うことには、「この国はどうせあの戦の時に一度死んだようなもんだ」てことらしい。
だから諦めがついているのだと。
知るかそんなん、というのが薄情な若者すなわち土方さんの意見。
俺はわりと、わかる気もしたんだけど。
することなんてとくになくて、行きたいところもなくて、車はすぐに走るのをやめた。
「どうする?」
「どうもしない」
「そりゃねーだろ総悟」
「じゃあ。すんげえキスしたい」
「そのすごいってのはどっちにかかんの」
「どっちでも」
してもいいですか、と聞く前にキスが降ってきた。
そう。合わせるとかくっつけるとかじゃなく、降ってきた。雨みたいな。
両肩に手がかかるのがくすぐったくて泣ける。泣ける?なんで。
しょうもないなあ、といって、抱きしめる。
こんなに幸せなかたまりに触れるのは、いつ以来だろう。
やさしい人。
でももう、いない。いるのはこの人だけ。
もういいから今がいちばん幸せってことにしておこう。
なんせ、明日世界は終わるからね。