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調子外れのはなうたを知らん顔でさやさや歌う。
ひとが通りかかろうとお構いなしだ。いい具合に安い酒に酔わされて、左右にあたまを揺らしながら、楽しげに総悟は言う。「おれ今日はきぶんがいいんです」
隣いいか、と一応聞いた。当り前に断られる。こいつのいうところの、プライベートは別、というやつだ。
副長隊長と呼ばれるときしか、こいつは俺に、距離を許さない。おぞけが走る、らしいのだ。
柱を挟んで座る。
ぶらぶらと草履を遊ばせた、骨っぽい足が見える。
煙草を吸うならむこうにいけ、と聞こえた気がする。忘れよう。
丸めたてのひらの中で火をともすと、草履が片方飛んできた。
「土方さんはいつもおれの話を聞かねえ」
「それは。気のせいじゃねえの」
「でもいいや」
「ききわけのいいこと」
「だって殺せる」
りいりい言うのは虫の声か耳鳴りか。
「あんたのこと殺せるってわかったから、すごくきぶんがいい」
「そりゃあ聞き捨てなんねえな」
昼間の稽古のことをいっている。
けして無様に負けたわけではないが、「圧倒的に」「清々しいくらい」と言うのは、まんざら違っちゃいない。
悔しいとすら思えなかった。向こう側にいってしまったような強さ。
それを見た。
「だから、もう。あんたに我慢できなくなったら、いつだって、おれは・・・・・・」
眠ったわけではないらしい。
柱のむこうでは、うるんだ眼球が夜を睨んでいた。
「お前みたいなのを、ばかに刃物って言うんだよ」
「ぴったりじゃねえですか」
「褒めてねえよ」
褒めるどころか、慰めることもできない。
誰かのように親身に優しくしてやることも。
剣はとっくに叶わない。取っ組み合いの喧嘩だって、体格にものをいわせてるだけだ。
じゃあなんだ、今更友情?まさか気色悪い。
総悟のなかで俺はどんどんどうでもよくなっていく。
きっとそのうち、殺すと喚かれることすらなくなるのだ。
殺してみろよと思う。
まるで夢見るみたいに、そう思う。