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木曜日

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ミツバお姉の誕生日って今日じゃなかったっけ・・・・・・・・・・・・・・・
(実はそごたんの誕生日も6日なのか8日なのか毎年わからなくなっているからね)

よしわかった私の26日は日曜日にくることにする。ミツバさんは優しいからきっと気にしないよ。うん。すみません。


と思ったもののまだ寝る前にじっと待っていけなきゃいけない作業があるのでその間に。
折り畳みで小話です。
宝物みたいに扱われる弟をうらやんだ、ほんのひととき。
思い返せば砂糖菓子のように甘くほとほろと砕けてしまう、不確かな記憶だ。

弟がようやく人間らしい言葉をつかいはじめたころ、父と母はそれぞれ別の相手と逃げた。

なんとまあいい大人が、自由なことだ。
私は悲しみよりも怒りよりもただ呆れてしまった。
遠い親戚だという「叔父さん」が、悪人でなかったのはせめてもの救いだった。間に入って、お金の工面をしてくれて、まわりの家にもずいぶん口を利いてくれた。
着物道楽だった母の箪笥の中身、それなりに見栄っ張りだった父の床下の骨董をあらかた売り飛ばしたら、子供二人が暮らす分にはそこそこ足りるようだった。

「叔父さん」がはたしてつゆほども、父母の失踪の糸を引いていないと言えるのか。
ちょっと段どりがよすぎはしないか。
そう勘繰ったことがないわけではない。しかし深追いする気はなかった。私は得のあるなしを見極める目はよいと自負していたし、大人たちの同情を引き出すしぐさも知っていた。

あそこの姉弟は食うにやっと。かわいそうに。そんな噂を耳にするたび、ほっと安堵の息を漏らしたものだった。
強い悪意の矛先になるよりも、ついでのように同情されているほうが、よっぽど過ごしやすい。

弟はほとんどしゃべらなくなっていた。
もともとびいびい泣いたり、大声をあげたりする性質ではなかったけれど、やはり前とは違っていた。
私よりもずっと幼い弟は、突然ふたりの親が消えたことをどう思っているのか、わかっているのか。たびたび胸にわいたその疑問を、弟に問うてみようとする。
しかしぎゅうっと身を縮めて眠る姿や、ひなたでぼうっとしている姿の前では、なにも言えなくなってしまう。

私は弟がかわいかった。

「そうちゃん」

庭先で佇む弟を、こいこいと呼ぶと、犬の子のように寄ってきた。
私は、木の枝で穴を掘った。そっけない土の音を聞きながらがりがりと、地面を掘った。

たらいくらいの大きさになったとき、枝先が石にあたってしまった。
なにも言わずに今度は、埋め始めた。掌で掻いた土は思ったよりあたたかく、柔らかかった。
いつの間にか膝をついていた。弟も同じように、両手両膝をついて。

平らにして、まわりからも寄せて集めて、ゆるやかに膨らませた。
埋めるものなんてなにもなかった。もとに戻しただけだった。

「これで大丈夫」

弟の丸い目がそっと覗きこんでくる。
私は地面に向かって両手を合わせた。

「父様と母様はもう戻ってこないわ。だから、大丈夫」

大丈夫、ともう一度口に出した。
泣かないで、と言ったのは弟だった。
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